穴守稲荷分神社(あなもりいなりぶんじんじゃ)
伊豆美神社から
レンタルサイクルで
田中橋の交差点を目指してきた。
たしか、この辺に稲荷神社があるのだが……。
自転車を止めてスマホのGoogleマップを見ながら、
近辺を歩き回った。
マップの示しているところにはバイク店!!
バイク店の左側に細い通路がある。
入り口に立て札が掲げられていた。
「穴守稲荷分神社」の由緒書きだ。
通路は自転車が置かれ
さらに狭く通りにくい。
奥をみると
なんと、2階に鳥居が見える。
あれか!?
この細い脇道をすすんでいいのだろうか、
なんだか、忍びいる泥棒さん
みたいな気持ちで、
そろりそろりと進んだ。
正面には赤い螺旋階段があり、
二階へと続いている。
くるくると回りながら、
あたまもくるくる回って
なんだか呪文をかけられた
ような感覚になって
二階へ登る。
すると、
マンション裏から各部屋へ行く道と
稲荷神社へ続く道があった。
すごいところだなあ。
鳥居をくぐると
両脇に稲荷さんがいた。
「けけっ。よく来たな」
右の巻物を咥えたキツネが言った。
巻物を咥えて喋れるわけないや。
「けっ、おめえの心に言ってんだ」
キツネの顔はどこか
生意気で憎たらしい顔をしている。
「なんや、俺の顔が憎たらしい?」
げっ、思ったこと見透かされた!?
「ふん、おりゃ(俺)は、何でも
わかるんだ。おめえの卑しいこころもな」
ひえーっ!
「ただ、あちこちお参りしても意味ねぇぞ。
数が多けりゃ、いいというもんじゃねぇ。
お参りというのはな、
自分の心の声を聞くことさ。
その声にしたがう、
そしてその自分を
神さまに宣うことじゃぞ。
わかったか!
まあ、そのボンクラの
頭じゃわかんねぇよな」
なんだか、変な声が
聞こえてきた。
僕は呪文をかけられたのだろうか。
もう一度キツネの顔を見る。
なにごともなかったように
シニカルな顔をしたキツネが
座っていた。
家に帰って
そのシニカルな顔を
描いてみた。
サムホールのキャンバスに
ゴテゴテとモデリングペーストを
塗りつけてそのままにしていたのがあったが
そこに油絵の具のホワイトをかぶせ
赤と青で
さっと描いた。
30分か。
キャンバスに描いたキツネは
シニカルに笑って僕を見詰めている。
(穴守稲荷分神社のキツネさん サムホール・キャンバス・ミックスメディア)
題材の場所: