天祖の狛犬

天祖の狛犬
天祖の狛犬(サムホール・キャンバス・ミクストメディア)

天祖神明神社の狛犬

いくつも狛犬を見てくると似たような狛犬さんは

忘れ去られていく。だが、数年たっても

記憶に残るものがある。

今回は、2020年の2月に足立区を回っていたとき

訪れた「天祖神明神社」(てんそしんめいじんじゃ)の狛犬だ。

数年前だというのに、その姿形が勇ましく

彫りが素晴らしくて記憶に残っているのだ。

 

谷塚駅近くの粂森稲荷神社を参拝して

(この神社の中のお稲荷さんは以前、絵に描いた)

粂森稲荷神社の神使たち

八潮市あたりの神社をレンタサイクルで回っていた。

いろいろ回って、垳川(がけがわ)という川を渡って

足立区に入ったところに神社があった。

神明鳥居をくぐり拝殿前に古風な狛犬が立っていたのだ。

天祖神明神社の参道
天祖神明神社の参道

近づくととてもカッコいい勇壮な狛犬さんがいた。

天祖神明神社の拝殿
天祖神明神社の拝殿

台座を調べると何やら普通の楷書の文字と違って

篆書風な文字で彫り込まれていた。

台座の文字
台座の文字

解読すると、

天保7丙申4月、石工 戸ヶ崎 林幸右衛門

1836年の狛犬だ。このような凝った字を彫り込むとは

狛犬もかなり力を入れた作品だと分かる。

吽形狛犬
吽形狛犬

吽形は左頭部部分が少し欠けているが、

阿形は保存状態良く、少し上を見上げ

たたずまいがカッコいいのだ。

阿形狛犬
阿形狛犬

それで今年の夏を終えた頃、にサムホールに描いてみようと

描き始めた。

多くは参道を通る人達を眺め

睨みを利かしている狛犬なのだが、

ここ天祖の狛犬さんは、

少し彼方の空を見つめ

この先の行く末を考えているかのようでもあるのだ。

1回描き終えた時の絵
9月14日に一度描き終えた時の絵

一度、筆を下ろして完成させたつもりであったが

しばらく経つと、もう少し味が足りないな…

そんなこんなで、すべてが乾ききったあとで

また、筆を取り出しようやく完成させた。

やはり、時間を置くと

客観的に見れ、もの足りないところが見え

再加筆が始まるのである。

乾いたあとの加筆は、下地と

加筆の層が重なりあって、

複雑な色味を感じ、僕としては

とても心地よくなるのだ。

 

どうでしょう? 狛犬さん。

 

何か意志めいた瞳の輝きを

僕に見せるのであった。

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