上野東照宮・阿形狛犬

上野東照宮・阿形狛犬
上野東照宮・阿形狛犬

上野東照宮(うえのとうしょうぐう)

上野駅から降りて、

国立西洋美術館を右手にして通り過ぎ、

上野動物園を目指して行くと、

左手に上野東照宮はある。

 

世界的にも有名なのか、

場所も駅に近いからか、

いつもここは日本人はもちろん

外国の方もたくさん

見学に来ている。

 

参道、途中には大きな

灯籠が立ち並び、

途中には旧寛永寺の五重塔もみえる。

さらに桜が咲いていたら

撮影場所としては絶好の場所だ。

 

あちこちで撮影している人達を

尻目に僕はキンピカの東照宮を目指す。

中には入れないので、

キンピカの扉の前でお参り。

 

舞い戻って、参道途中の

狛犬を見上げる。

 

「おおおー」

思わず心の声が出てしまう。

 

高い台の上に

筋肉隆々のたくましい狛犬。

ボディービルダーになっても

いいくらいの肉付きだ。

「われこそ、ここを

見守る獅子なり。

あやしいやつは、いないな!」

と言って

睨みつけているようだ。

 

これこそ、

威厳ある強面の

狛犬たる狛犬といったところだ。

 

石工は「井亀泉」といわれた

酒井八右衛門

江戸では有名な人だったらしい。

大正3(1914)年3月の作である。

 

見ているだけで

圧迫されるような気迫。

この気迫に面と向かって

対峙してみるか!

そう思って筆をとった。

 

上野東照宮・阿形狛犬を描く

キャンバスに

だいたいの輪郭を描き

そこから一気に下地づくり。

モデリングペーストと赤で

塗りたくった。

 

色覚異常者には赤は禁物だ。

赤は緑と茶と近い色なのだ。

 

赤 = 情熱 という

いわゆる数式が頭にある。

 

狛犬の背景を赤い色で

ぐるぐると

玉のような模様を描いた。

 

自分では狛犬から出た

エネルギーを

表現したつもりだった。

 

描いている途中、

かみさんが後ろから見て言った。

「トマトを描いての?」

 

ト、トマト?

この気迫の玉がトマトだと!?

 

頭を抱えてしまった。

描いている気持ちが

いきなりしぼんだ。

トマトと言われた 最初の頃の絵

 

その日、ひとまず絵を

描き上げたが、

別の日に気迫の玉を

別の色で塗りつぶした。

トマトではないのだ。

 

納得いかないで

数ヶ月も放置していた。

 

絵というもの

時間が経つと、

少し客観的に見れるようになる。

 

乾ききった絵の上に、

また狛犬に筆を塗りつけ

背景に色を塗り重ねた。

しまいには絵の具を

散らした。

 

なんとか様になったかな。

僕を描き終えたあと、

絵の中の狛犬に聞く。

 

「われこそは、

狛犬なり。

ふふふふふ……」

 

なにを言っているのだ。

とにかく、

ふふふふふ、ということだろう。

 

いずれにしても

まともに戦ったら

勝てそうにない。

 

また、別の手で挑戦だ。

狛犬情報:大正三年(1914年)三月奉納 石工・酒井八右衛門

 

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題材の場所: