加須市鷲神社（かぞしわしじんじゃ）の狛犬を見に行く
「埼玉の狛犬」という本を
先日買ったのだが、
その中の狛犬でひじょうに
かわいい狛犬がいるではないか！！
埼玉県のいろいろな
狛犬の載っている本。
「いろいろ見ていない狛犬がいるなあ」と
ページをパラパラとめくっていると
その中のひとつにぴったと
目が止まった。
玉を抱いている
とても愛くるしい狛犬だ。
「えーっ！！ これは、
かわいい。こういうのが
埼玉にあるの！？
これは、ぜひ見に行かなくては」
と僕はこのコロナばやりと
いうのに、お盆の頃、
車で埼玉県の北方面へ
出かけた。
加須市ICを降りて
目的地の鷲神社（わしじんじゃ）へ。
鷲神社はなんとほとんど
県境のところにある。
ちょっと北側に向かえば
群馬県なのだ。
西側から土手沿いを
通ってくるとだんだん
道が細くなり、
民家が右に見えると
正面に神社の横っ腹が
見えた。
なんと、神社の前が
道路になっていた。
神社の前を通り過ぎて
その辺りの少し
広くなっている道路に
とめた。
田舎の
ちいさな神社であった。
神社の左は民家が
立っているが、
民家の前は
広い畑が広がっている。
目的の狛犬は
階段をのぼった
拝殿の敷地の前に
左右に置かれていた。
阿形のほうは、
可哀相に
アゴが少し欠けていた。
吽形は玉を抱くように
持って、あどけない
表情をしている。
「これだ、目的の狛犬！！」
本にも書かれていたが、
この辺りで玉を持っている
狛犬は珍しいのだ。
玉をもっている狛犬で有名なのは
広島県。
僕は実際のを見たことはないが、
狛犬本によると広島県界隈が多いのだ。
しかし、広島型とも
少し違うとネットで有名な
「神社探訪・狛犬見聞録」では
記しているので、独自に作った
狛犬なのだろう。
台座をみると
残念ながら石工の名前はとくに
見当たらなかった。
阿形の台座に奉納者の夫婦の
名前と、その息子であろう
名前が彫られていた。
吽形の台座に奉納年月、
大正１３年正月元旦と刻まれている。
想像するに
息子のかわいさを狛犬に託して
石工さんに表現してくれないかな、
と夫婦が依頼したのかも知れない。
この彫られた狛犬を
見ていると、そのような
思いというか
温かみが感じられるのだ。
玉を抱く狛犬を描く
撮った写真をもとに
わざわざ絵を描かなくても
写真を載せれはいいじゃない？
と思うかもしれない。
写真は、そのままを
切り取り写し込む。
それはそれでいい。
ただ、僕はその愛しい
姿を「描きたいから描く」のだ。
なぜ僕が狛犬を描くように
なったのか。
いくつか理由はあるが、
ひとつは、
狛犬ってあまり、
世間から知られていなかったりする。
そのマイナーな存在の機微が
いいのだ。
先日も絵を描く仲間と
酒を飲んでいたとき、
「狛犬を描いているんだ」と
言ったら、
「えーっ、狛犬？？
面白いのを描いてるねぇ。
神社にあるあれだよね。
みんな同じじゃないの？」
と言われてしまった。
そう、たまに参拝に行っている人には
狛犬の存在自体にも気づいて
いないし、ああ、あったね、と
言っても、同じようなものとしか
認識されていないのだ。
そのような、誰も気づかないで
（もちろん狛犬ファンは別だけど）
ちょこんと座っている存在が
愛しいというか僕の好みでもあるのだ。
メジャーにはなりきれなくて、
でも、しっかりとまわりを
ささえてる狛犬。
そこが愛しいのだ。
それに、狛犬のいる環境も
さまざまってことがある。
炎天下にあっても、
雨風降っても、
軒下に置かれても
苔に覆われても、
虫に這いずり回されても
境内の端に無造作に置かれても
ただ、ひたすら黙って
座っている。
けっして環境がいいところに
いるわけではない。
そんな狛犬さんを
少しでも、絵にして
いい環境の中に入れて
讃えてみたいではないか。
まあ、そんな気持ちで
描いているわけだ。
今回の絵は、
またまた、一度描いた絵が
気に入らなくなった絵を
モデリングペーストで
潰して、今回の絵を
描いた。
愛おしい狛犬さん。
「玉、だいじに持ってるねぇ」
狛犬ちゃんは言う。
「だめだよ、この玉さわっちゃ。
僕のだいじな玉なんだから！！」
題材の場所：
参拝3000社を超える