鎮守氷川神社・阿形狛犬

鎮守氷川神社・阿形狛犬
鎮守氷川神社・阿形狛犬(F4・油絵)

鎮守氷川神社(ちんじゅひかわじんじゃ)

2019年の夏、暑い最中に

鎮守氷川神社に着いた。

 

ここには3対の狛犬がいる

鳥居の近くに岡崎型狛犬。

絵馬掛けの近くに大正時代の狛犬。

 

そしてなんといっても

拝殿近くの嘉永四年の狛犬

とても特徴的だ。

石工は不明だ。

 

今回はこの阿形の狛犬を

正面から描いた。

 

眉毛の下の目元が

落ちくぼみ

太陽の影で描き出された

そのシルエットは

もう一つの眉毛のように見える。

 

口角は少しあがり

まるで、見つめるヤカラの

心を見透かしたような

不敵な笑いを浮かべている。

 

このキャンバスは

一度描いた絵を

塗りつぶしている。

ホワイトを乗せて

あらたに

描き起こしたものだ。

 

最初、西洋梨の静物画を

描いたのだが、

なんだか気にくわない。

結局、見るのも嫌になったので、

ホワイトを全面に塗りかぶせた。

 

そして、この狛犬を描いた。

不思議なもので

筆のすすまないときは

いくら頑張っても

すすまない。

 

でも、この塗りつぶした

キャンバスの上に

筆を走らせていると

スイスイすすんでいった。

 

塗りつぶした、

半乾きのキャンバスの上に

筆をすべらせる。

ときおり、

塗りつぶしきれなかった

下地が透けているのが見えるが、

それが、なぜか心地よく

筆が走っていった。

 

だから、この絵の下には

洋梨の絵が隠れている。

描きあげた狛犬くんが言う。

 

「なんでナシの上に描いた?」

「絵の反応は、梨のつぶてか」

「塗りつぶされて日陰の梨になったな」

 

キャンバスに鎮座した狛犬くんは

不敵に笑っている。

 

 

(鎮守氷川神社・阿形狛犬 F4 キャンバス・油絵)

狛犬情報:嘉永四年(1851年)九月奉納 石工名不詳

 


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