凝視(戸倉神社・阿形狛犬)

凝視(戸倉神社・阿形狛犬)
「凝視」(P8・キャンバス・油絵)

戸倉神社(とくらじんじゃ)の狛犬

今回の絵の題材は、戸倉神社の狛犬である。

2019年、桜の満開がちょっと

過ぎた頃、僕は西武国分寺線の

小川駅を降りるとレンタサイクルを借りて

近辺の神社まわりをしていた。

戸倉神社近隣桜
戸倉神社に来る途中に咲いていた桜。遠くに昼の月が見える。

天気のいい日だった。

あちこちを回って

15時過ぎた頃、

住宅と田畑が広がる中に

戸倉神社があった。

 

戸倉神社って、あまり聞かない

神社名だな、と思いながら

参道に入ると、

すぐに段違い平行棒のように並んだ

鳥居が見えた。

戸倉神社の鳥居
戸倉神社の鳥居

鳥居でいったん立ち止まり

軽く会釈をして進むと、

参道先の拝殿前に

狛犬が右、左に見えた。

石とは違う輝きである。

戸倉神社拝殿
戸倉神社の参道と拝殿

近づくとブロンズ製で

あることが分かった。

険しい顔をして、

遠くの一点を見つめている。

なにか思いを秘めているような狛犬だ。

ウエーブした鬣が

両頬を覆い

威厳をあたえている。

足元にいる子獅子は

そんな親の表情を

伺うように顔を上げている。

戸倉神社・阿形狛犬
戸倉神社・阿形狛犬。絵は別角度から見たもの。

誰が作ったのだろう?

台の裏に回ってみると

プレートが貼ってあった。

「昭和11年11月12月

 東京月島

 坂本半蔵」

戸倉神社狛犬台座
戸倉神社・狛犬の台座に貼られていたプレート

あとで、ネットで調べてみたら

一件だけ、狛犬のファンの

ブロクに、同じ情報が載っているだけで、

他にはなにも現れなかった。

 

月島にいた造形作家さんなのだろうか。

坂本龍馬と服部半蔵を

足して、2で割った名前で興味深い。

そのようなイメージからか

この狛犬には、

凛とした空気と威厳が感じられた

 

参拝をすませ、本殿まわりを

回っていると、柵の中に

古い狛犬がいるのが分かった。

かなり年代は古いのだろう。

阿形は顔が少し欠けていた。

狛犬を見つけても場所によって

近づくことができないのも多々ある。

これも遠くから眺めるだけであった。

戸倉神社本殿狛犬
戸倉神社本殿の狛犬

この神社の特徴は、

拝殿右に立っている御神木が

こんもりとした炎の形

であること。

とてもいい形をしている。

戸倉神社御神木
戸倉神社の御神木

落ち着いた、いい神社であった。

 

戸倉神社の狛犬を描く

僕は撮ってきた写真をもとにして

描くことが多い。

この狛犬はいままで撮ってきた

写真を眺めていたとき

ふと目が止まったのだ。

いままで撮ってきた写真枚数は

20000枚はあろうか。だが、しかし

よく撮れている写真は少しだけ。

スマホ画面をさーっと

スクロールしていると

なぜか、ぴたっと

この狛犬に目が止まったのだ。

この狛犬やはり

インパクトがある。

この狛犬の視線が気になった。

キャンバスを取り出すと

一気に下地をモデリング

ペーストで塗りだした。

最近は、下地をアクリルで

一気に塗り上げ、乾いたあとから油絵で

補強して描き込むことが多い。

 

描きたいと思ったら

一気に描き込んでいきたいのだ。

だから、下地にあまり時間を

かけたくない。

乾いた下地に、

次はざくざくと

おおまかに構図を描いていく。

紙に下絵を描いて

キャンバスに写し込むような

面倒なことはしない。

最初に描いた線は

頭を掻きむしるぐらい

デッサンが狂った。

ちょっと横を向いた顔って

描くと意外と難しいのだ。

(正面や真横は描きやすいが、

ちょっと横向きは、頭の球体を

意識してないと微妙にデッサンが狂うのだ)

当初、2日間で描き終える予定が、

結局、この顔の表情を整えるのに

5日を要した。

もちろん昼間は仕事なので、

夜、遅く1,2時間作っての補筆だ。

デッサンチェックの方法

デッサンが狂っているかの判断する方法

●描いた絵を天地逆で見る

●鏡を通してみる

●描いた絵を写真に撮り、左右逆版にしてみる

絵の学校に行っていない僕は、こんなことをして

絵を描いている。学校では教えられるのかも知れないが、

自分で考えたすえ、このようにして見ると

客観的にみれていいのだ。

逆にしてみるといかに自分の眼が不正確に

とらえているかがよくわかる。

キャンバスにちゃんと下書きして

描いていったら、試行錯誤の

筆跡がなく綺麗にかけるのかも

しれないが、僕はしない。

油絵は間違えれば、上から重ねれば

修正できるのだ。

ただし、あまり混色していくと

色は濁って彩度が落ちてくるのは分かる。

なるべく、そのようにならないよう

注意して絵の具を置いていかなくてはならない。

幸いこの絵はモノクロームに近いので、

その点は問題にならないであろう、

いいように考える。

ただ、この狛犬は視線が命だ。

その思いで、けんめいに

塗りたくった。

タイトルは「凝視(ぎょうし)」にした。

 

「これからも描いていくんだな」

狛犬に聞かれたような気がした。

「しっかり目標を持つんだ。

前を見ろ!」

描き終えた狛犬から

そう、伝えられた気がした。

(P8・キャンバス・油絵)

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