戸倉神社(とくらじんじゃ)の狛犬
今回の絵の題材は、戸倉神社の狛犬である。
2019年、桜の満開がちょっと
過ぎた頃、僕は西武国分寺線の
小川駅を降りるとレンタサイクルを借りて
近辺の神社まわりをしていた。
![戸倉神社近隣桜](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/7df3a29b9fa0679f55ef4d07ca1507fd-768x1024.jpg)
天気のいい日だった。
あちこちを回って
15時過ぎた頃、
住宅と田畑が広がる中に
戸倉神社があった。
戸倉神社って、あまり聞かない
神社名だな、と思いながら
参道に入ると、
すぐに段違い平行棒のように並んだ
鳥居が見えた。
![戸倉神社の鳥居](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/d59ef40b666b81d1febdad530afa9903-1024x768.jpg)
鳥居でいったん立ち止まり
軽く会釈をして進むと、
参道先の拝殿前に
狛犬が右、左に見えた。
石とは違う輝きである。
![戸倉神社拝殿](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/29d76f1abb6bd4d1d9424e991ca5f94e-1024x768.jpg)
近づくとブロンズ製で
あることが分かった。
険しい顔をして、
遠くの一点を見つめている。
なにか思いを秘めているような狛犬だ。
ウエーブした鬣が
両頬を覆い
威厳をあたえている。
足元にいる子獅子は
そんな親の表情を
伺うように顔を上げている。
![戸倉神社・阿形狛犬](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/3c0cb50ad99688c4488ac98ff05f042a-1024x768.jpg)
誰が作ったのだろう?
台の裏に回ってみると
プレートが貼ってあった。
![戸倉神社狛犬台座](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/7520d7a48608ef5a10af201e4aa4ae1b-1024x768.jpg)
あとで、ネットで調べてみたら
一件だけ、狛犬のファンの
ブロクに、同じ情報が載っているだけで、
他にはなにも現れなかった。
月島にいた造形作家さんなのだろうか。
坂本龍馬と服部半蔵を
足して、2で割った名前で興味深い。
そのようなイメージからか
この狛犬には、
凛とした空気と威厳が感じられた。
参拝をすませ、本殿まわりを
回っていると、柵の中に
古い狛犬がいるのが分かった。
かなり年代は古いのだろう。
阿形は顔が少し欠けていた。
狛犬を見つけても場所によって
近づくことができないのも多々ある。
これも遠くから眺めるだけであった。
![戸倉神社本殿狛犬](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/cc59fea91f700b9fa841da80192ed6cd-300x225.jpg)
この神社の特徴は、
拝殿右に立っている御神木が
こんもりとした炎の形
であること。
とてもいい形をしている。
![戸倉神社御神木](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/ebcbc3551367ecd09b45fb23929fb9a4-768x1024.jpg)
落ち着いた、いい神社であった。
戸倉神社の狛犬を描く
僕は撮ってきた写真をもとにして
描くことが多い。
この狛犬はいままで撮ってきた
写真を眺めていたとき
ふと目が止まったのだ。
![](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/smartphone_suwaru_man.png)
いままで撮ってきた写真枚数は
20000枚はあろうか。だが、しかし
よく撮れている写真は少しだけ。
スマホ画面をさーっと
スクロールしていると
なぜか、ぴたっと
この狛犬に目が止まったのだ。
この狛犬やはり
インパクトがある。
この狛犬の視線が気になった。
![](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2020/11/art_canvas-300x246.png)
キャンバスを取り出すと
一気に下地をモデリング
ペーストで塗りだした。
最近は、下地をアクリルで
一気に塗り上げ、乾いたあとから油絵で
補強して描き込むことが多い。
描きたいと思ったら
一気に描き込んでいきたいのだ。
だから、下地にあまり時間を
かけたくない。
乾いた下地に、
次はざくざくと
おおまかに構図を描いていく。
紙に下絵を描いて
キャンバスに写し込むような
面倒なことはしない。
![](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2020/11/bunbougu_enogu-1-300x230.png)
最初に描いた線は
頭を掻きむしるぐらい
デッサンが狂った。
![](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2021/02/pose_zetsubou_man-300x300.png)
ちょっと横を向いた顔って
描くと意外と難しいのだ。
(正面や真横は描きやすいが、
ちょっと横向きは、頭の球体を
意識してないと微妙にデッサンが狂うのだ)
当初、2日間で描き終える予定が、
結局、この顔の表情を整えるのに
5日を要した。
もちろん昼間は仕事なので、
夜、遅く1,2時間作っての補筆だ。
デッサンチェックの方法
●描いた絵を天地逆で見る
●鏡を通してみる
●描いた絵を写真に撮り、左右逆版にしてみる
絵の学校に行っていない僕は、こんなことをして
絵を描いている。学校では教えられるのかも知れないが、
自分で考えたすえ、このようにして見ると
客観的にみれていいのだ。
逆にしてみるといかに自分の眼が不正確に
とらえているかがよくわかる。
キャンバスにちゃんと下書きして
描いていったら、試行錯誤の
筆跡がなく綺麗にかけるのかも
しれないが、僕はしない。
![](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2020/06/bijyutsu_paint_man2-300x300.png)
油絵は間違えれば、上から重ねれば
修正できるのだ。
ただし、あまり混色していくと
色は濁って彩度が落ちてくるのは分かる。
なるべく、そのようにならないよう
注意して絵の具を置いていかなくてはならない。
幸いこの絵はモノクロームに近いので、
その点は問題にならないであろう、
いいように考える。
ただ、この狛犬は視線が命だ。
その思いで、けんめいに
塗りたくった。
タイトルは「凝視(ぎょうし)」にした。
「これからも描いていくんだな」
狛犬に聞かれたような気がした。
「しっかり目標を持つんだ。
前を見ろ!」
描き終えた狛犬から
そう、伝えられた気がした。
(P8・キャンバス・油絵)
![トップ画像へ](https://shi9ga3.com/wp-content/uploads/2020/06/Art035.png)
題材の場所:
「昭和11年11月12月
東京月島
坂本半蔵」