田端日枝神社・阿形狛犬

田端日枝神社・阿形狛犬
田端日枝神社・阿形狛犬(F6・キャンバス・アクリル)

(田端日枝神社・阿形狛犬 F6・アクリル画)

田端日枝神社(たばたひえじんじゃ)

2018年の6月9日。

今日はこれで神社参りは最後にしようと

スマホの地図を見ては、自転車で進んでいた夕方。

住宅街の袋小路に来たら

道路を掃いていたおばさんから声をかけられた。

「この先は行き止まりですよ」

怪訝な顔をしている。

 

昭和を感じるアパートの横には

山王タイプの鳥居が見えた。

「この神社を見に来たんです」

不審者じゃないことを

アピールするように答えて

いそいそと鳥居をくぐった。

田端日枝神社の鳥居
田端日枝神社の鳥居

 

左の吽形狛犬に 思わず目がとまった。

欠けた顔、摩滅したカラダ。

狛犬だが形が判然としない。

右の阿形も同様に カラダが傷んでいた。

夕陽を浴びた狛犬は、

風化はしていたが、

なぜか、いい味わいを 醸し出していた。

 

後日、知ったがこのあたりは

かなりひどい 戦災を受けたようで、

この狛犬は戦禍を乗り越えてここに立っていたのだ。

田端日枝神社の参道階段。
田端日枝神社の拝殿
田端日枝神社の拝殿

神社参りをし始めて

初めて狛犬に惹き付けられたのが

この田端日枝神社の狛犬である

なにが、そんなに惹き付けられるのだろう。

風化具合か。欠け具合か。

判然としない形で

もくもくと座り続けているからか。

台座には大正十二年

高木梅三郎と 記されている。

 

初めての狛犬画と色覚異常(色弱)

狛犬に興味を持ち始めたのは

この狛犬からだった。

絵を描き始めようと思い

最初に脳裏に浮かんだのがこの狛犬だった。

狛犬を描くのなら

この狛犬から描こう、 そう思った。

 

キャンバスにモデリングペーストを 塗り、

下地を凸凹させた。

なぜか、つるつるした地肌より

ごつごつした感触がが好き。

 

わたしは色が分かりやすい

黄色と青が好き。

色覚異常(赤緑色盲)は、

赤と緑は分かりづらいから、にがて。

 

乾いたペーストの下地に 好きな黄色を塗った。

乾くと次に好きな青をかぶせる。

すると苦手な緑が表れる。

 

黄色 + 青 = 緑

数式のように覚えているのは

色覚異常者が体得している 生活の知恵。

混色は数式のように覚えている。

混色すれば、理論上、緑ができる。

おそらく緑だろう、と。

 

正常者に伝えるには、

どのような見え方になっている

といったらいいのだろうか。

ことばのイメージで言えば、

「赤」「緑」「茶」の文字が折り重なって

一箇所に見えている、というような感じか……。

その中から、一色だけの文字を取り出すことは

ひじょうにむずかしいのだ。

 

だから、わたしが混色したとき、

ここでOKという判断は、

もう、自分の中の直感でしかない。

 

キャンバスの真ん中に

あの風化した狛犬を

茶色でしたためた。

 

茶色は、一番安心できる色。

不思議なことに

嫌いな赤と緑を混ぜると茶色になるという。

 

はっきりと言えないのは

わたしの見えている茶色が

正常者の見えている色と同じとは言えないから。

恐らく、ずれているだろう。

ただ、わたしは茶色が一番安心できる色なのだ。

 

はじめて描き上げた狛犬のアクリル画。

まだまだ拙いが、なんとか仕上げた。

描いている間は、無心になれて

とても充実した時間だった。

 

満足してイーゼルに立て掛けてあった

この狛犬の絵を見て、娘が言った。

「なんか、変なサルの絵が描いてるね」

 

(田端日枝神社・阿形狛犬 F6・アクリル画)

狛犬情報:大正12年奉納
曾我廼家五九郎(明治から昭和にかけての日本の喜劇俳優。)
石工 高木梅二郎

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題材の場所: