狛犬降臨

狛犬降臨
狛犬降臨(F15 ・キャンバス・ミクストメディア)

狛犬の絵を描くきっかけの地

狛犬の絵を最初に描いたのは

2019年の6月の頃、題材は、

田端日枝神社に座っていた狛犬である。

だが、狛犬というものを描きたいと思ったのは、

実は、福島の狛犬を見てからなのだ。

 

※初めて狛犬を描いた絵の記事

田端日枝神社・阿形狛犬

友人のお見舞いと狛犬見学

友人が手術をして、その後の経過が

気になっていたのは2019年春頃だった。

その友人は福島の山奥にある村に住んでいた。

元は東京でバリバリ、デザイナーの仕事をしていた。

ある年、デザインの仕事をたたんで

自宅マンションを貸すことにして

夫婦ともども福島に引っ越して行ったのだ。

数年前から田舎暮らしを計画していたらしい。

東京では一緒によく飲んでいた仲なのだが、

福島に行ってから、距離もあり、

たまに彼が東京に出てきたときに会うぐらいで

こちらは一度も彼の家を訪れたことはなかった。

 

ちょうど、そのころ狛犬に関心を持ち始めて

あちこち神社回りをしていた僕。

福島と言えば、あの有名な小松利平・寅吉・小林和平の

狛犬のあるところではないか。

いつも、「たくきさん」※の狛犬本を眺めては、凄いなあと

思っていた。

※狛犬界では、有名な第一人者、「たくきよしみつ」さんのこと

そうだ、お見舞いがてら見に行こう。

僕はゴールデンウィークを利用して

車で出掛けたのだった。

幸い彼に会うと元気な顔をしていた。

久しぶりの再会に喜んだ。

彼の家に着くと

まずは、新橋近くの神社で買ってきた

御守りをプレゼント、

明日は狛犬を見て回ることを話した。

事前に、そちらに行くのは狛犬を見ることを

兼ねていることを伝えていたのだ。

 

「たくきさん」の本を持って

これから訪れるであろう神社を

満面の笑みを浮かべて語った。

「この近辺には、有名な狛犬が

たくさんあるんだ。全国的にも

水準の高い狛犬がいるんだよ」と。

恐らく、熱っぽく語る僕を見て

びっくりしたかもしれない。

 

翌日、結局、

夫婦も一緒に、

福島の狛犬の見学に

昼過ぎまで付き合ってくれたのだった。

二人とも福島のいくつかの

狛犬を見学していくうちに

しだいに関心をもってくれているようなさまが

僕にはとても嬉しかった。

 

鹿島神社の狛犬

鹿島神社の行ったのは、

友人の家に泊まった翌日だった。

鹿島神社の扁額
鹿島神社の扁額

階段を登りきったところに

境内が広がるが、その境内の

手前にこの狛犬さんがいた。

鹿島神社・階段
鹿島神社の階段

その姿は、普通よく見るタイプとは

まったく異なった物体が

台の上に乗っかっていた。

 

まるで、ねぶたのように

勇ましい顔をした狛犬さんが、

構えていた。

しばらく茫然とした。

それほど、この狛犬の出来のよさに

圧倒されたのだ。

それは、身を削るようにして

石を刻み、彫り上げたのだろう。

無心になって、石を削っている

石工さんの姿が脳裏に浮かんできたのだ。

鹿島神社・阿形狛犬
鹿島神社・阿形狛犬 ほれぼれするくらい素晴らしい!!

まさに芸術品。

だが、あまたある厳重に管理された室内の芸術品とは

まったく違う環境の中の芸術品である。

辺りは木々の生え、

境内は草の生い茂り、

ときおりヤブ蚊が舞い踊る、

誰もいない神社の中、

たまに来る参拝者に

睨みをきかせている狛犬。

晴れの日も、曇天の日も、雨の日も、雪の日も…

のざらしの芸術品なのだ。

(僕は芸術品だと、思っているのだが、

狛犬はまだ、世間的には評価されていない。

巷にあるよくある石像にぐらいしか、多くの人は

思っていないのだろう。そのような

立ち位置にある狛犬が、

僕にとってはひとつの魅力ではある)

 

僕は阿形の前、吽形の前に行っては

立ち止まり、写真を撮っては、

眺めまわり、味わい尽くした。

しばし、この小松寅吉さんの作った

狛犬さんを眺めて悦に浸っていた。

 

狛犬の絵

当時(2019年6月頃)は、インターネットで

「狛犬」「絵画」と検索しても

あの狛犬で有名な、小松美羽さんの絵か

画家さんが描いたとしても

岡崎型の絵ぐらい、しかなかった。

ひとつは、想像上の狛犬、

これは作者の独創なので、

現実の寺社に置かれている狛犬さんとは

姿かたちがかけ離れている。

かと、言って、現実の狛犬さんを描いた絵は

典型的な岡崎現代型の狛犬が多かった。

絵を描くことに、重きを置いている画家さんには、

たまに神社に行って狛犬を見るからか、

目につく狛犬といったら

岡崎型の狛犬だったのかもしれない。

岡崎型については、こちらをどうぞ

岡崎型・吽形蹲踞

江戸時代に始まった流尾タイプや、

護国型狛犬、獅子山の狛犬、はじめ狛犬など、

なかなか見当たらないのである。

それじゃ、僕が描いてみよう、と思って

6月頃から描き始めた。

で、本来は、この福島の狛犬を

最初に描きたかったのだが、

あまりにも題材が神々しく難しい題材なので

ずっと描けなかったのだ。

少しずつ描き慣れてきてから

着手しようと思ったのだった。

 

この鹿島神社の狛犬は、

絵を描き始めて5ヶ月ぐらい経った

秋ぐらい(2019年10月)に描き始めた。

描いては筆をおき、

また描いてはおいて

何回繰り返しただろう。

結局、なっとくいかず

ずっと、描きかけのままだった。

 

そして、今年(2021年)のはじめに

お蔵入り状態だった絵を、

また、イーゼルに乗せて

いっきに描き上げたのだ。

狛犬を描きたい最初の動機を

与えてくれた福島でみた数々の狛犬。

そして、なかでもこの小松寅吉さんの狛犬を

見たときの衝撃!

まさに、それは

みえない何かが降臨してきたような、

感覚だったのだ。

この絵はそのときの絵だ。

 

ありがとう。

僕はこの絵の前で

そのみえない何者かに

感謝の言葉を伝えたい。

「F15 ・キャンバス・ミックスメディア(油絵)」

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