高龗神社(たかおじんじゃ)の狛犬
これほどユニークな狛犬はいないだろう。
丸い目、そのマナコの中心にポツンと点がある。
何かに驚いたような、きょとんとした目なのである。
思わず微笑みがこぼれ、慈しみたくなるような、
かわいいひょうきんな狛犬さんなのである。
事前に調べていた僕は、胸を高鳴らせてその日
車を走らせた。
2023年の4月の後半の土曜日、
宇都宮の道の駅ろまんちっく村で車中泊。

翌朝、早く起きて僕は
宇都宮駅北に5.5kmほど行ったところにある岩本公民館を
目指して車を走らせた。道端に車を停め、
階段を登ると右側に公民館が見え、
その先を登ると鳥居が見える。
ここが高龗神社(たかおじんじゃ)の入り口なのである。

赤い鳥居をくぐるとまた階段。

目的の狛犬さんは階段を登りきった
両脇に座っていた。



吽形狛犬の後ろ、灯籠の前に先代狛犬が置かれていた。
(先代狛犬=以前に置かれていた狛犬のこと)



吽形狛犬の台座を見ると、「昭和三年」の文字が見える。
先代狛犬が壊れたので、昭和三年の同じように作られたのではないか、と言われている。
それにしてもこの表情、個性的である。
このタイプ、「はじめ狛犬」と言われているが、
その中でも、ひじょうにひょうきんでユニークな狛犬だ。

とても気に入ってしばらくずっと
眺めていました。

拝殿は岩穴を半分を利用したちょっと変わった作り。
このユニークな狛犬を描いてみたい。
そう思った。
はじめ狛犬を描く
「はじめ狛犬」描くのはいいのだが
だいたいこのタイプの狛犬は
毛並みや造形がだいたいがシンプルなので
画面に描いても、なんか間がもたないのだ。
例えば、狛犬には
「岡崎型」、「江戸型」、「出雲型」、「尾道型」、
「大阪(浪花)型」、「飛翔型」などいろいろあるけれど、
それぞれ、たてがみが流麗だったり、
しっぽが派手だったり、体の模様が凝っていたりして
画面に描いても飽きがこないのだが、
「はじめ狛犬」はあまりにもシンプルすぎて
単純な線と単調な面になって、
困ってしまうのだ。
だから、狛犬以外に何かをサブになるものを
添えて描くか、背景を凝って描くか…
どうにか周りを描きこんで
いったん終了にしたのが下の絵。
このときは、すべてアクリル描いた絵である。

いまいちだなぁ……背景もいまいち……
色の感じも気持ち悪い……という感じで
棚に仕舞っていたが、6月に絵を取り出してこんどは
油絵絵具を取り出した。
背景を変えちゃえ、とペインティングナイフで
背景を塗りつぶしていった。
だから、葉っぱの凸凹がところどころ残っている。
背景に色を散りばめることで、これでいいかな、
と投了したのであった。
こんなとこでどうですかね、狛犬さん?
「はあ???」
狛犬は、目を丸くして
きょとん としている。
もっとどうにかならんかったかや? と言いたげである…。
うむむ……。

題材の場所:
石でできた参道狛犬が作られ始めたのは江戸中期の頃。
その頃、狛犬という造形をよく知らない石工たちが、
伝聞や自分の想像をめぐらして彫りはじめた。
だから技術的には稚拙であるが個性的で素朴で味のある狛犬が多い。