メルヘン狛犬(小岩田八幡神社・阿形狛犬)

北小岩八幡神社・阿形狛犬
メルヘン狛犬  P20・キャンバス・アクリル

小岩田八幡神社(こいわだはちまんじんじゃ)

かわいい!!

この狛犬を初めて見たとき、

素直にそう思った。

 

その頃、狛犬に関心を持ち始め

いろいろと見始めていたのだが、

石造りの狛犬に見慣れていた僕には

コンクリート(表面にはこまかな

石英っぽい石が張り付いている)で

できた狛犬は見たことがなかった。

 

2019年の6月、

京成成田空港線・新柴又駅を降り、

朝早くから神社回りを始めて

三社目の神社だった。

北小岩八幡神社の鳥居
小岩田八幡神社の鳥居

鳥居をくぐると

右手近くに北原白秋の歌碑

立っていた。

ふーん、この辺りに北原白秋が

住んでいたのか……知らなかったなあ、

思いながら参道を通ると

いつも見る石造りの狛犬と

違った質感の狛犬が台に乗っかっていた。

北小岩八幡神社境内
北小岩八幡神社境内

「うはっ! かわいいじゃん。

なんて愛嬌のある顔なんだ」

思わず心の声。

 

ずんぐりむっくりしたボディに

ムーミンみたいな、

バカボンパパのような、

顔がのっかっている。

親の手を背中に受けている

子獅子(子獅子でと言えないなあ、

おこちゃま狛犬)の顔も

あどけなく可愛い(^^)

 

台座の裏に回って見ると

プレートが貼ってあった。

北小岩八幡神社狛犬台座
昭和八 まで読み取れるが、、。

 

昭和8年の作までは、

分かったのだが、

なんと、石工(というのか作者)の

名前の部分が欠けていて

分からない!

えええーーー。

この可愛い狛犬の作者

知りたかった!! 残念すぎる!

 

ちなみに昭和8年の出来事を調べてみると

  • 日本、満州国を巡って国際連盟を脱退。
  • 国定教科書の改訂が実施され、「サイタ サイタ サクラガ サイタ」で始まる教科書が登場
  • プロレタリア作家小林多喜二が警視庁築地署の特高課員に逮捕され、翌日夜遺体で帰宅。拷問によるショック死
  • 人気映画 : 伊豆の踊り子  滝の白糸  丹下左膳

しだいに軍国主義に進んでいく頃です。

 

狛犬愛好者で有名な本

圓丈師匠『THE狛犬コレクション』

をこのころの僕は知らなかったが

あとでAmazonで購入(すでに廃刊なので

古本屋経由)して読んでいたら

ちゃんと、この狛犬のことが載っていた。

「秀品狛犬十一点」の最後にある。

圓丈さんが名品のひとつに挙げているのも

わかります!

 

〇『THE狛犬コレクション』は

現在、アマゾンの中古品でしか

買えない(・・;)

 

僕はこの狛犬に惚れて

また見に行くことになりましたから。

 

それにしても

軍国主義に向かおうとしていた

その時代になぜ、

このようなメルヘンチックな

狛犬を作ったのか。

 

圓丈さんによると

「彼は日本が軍国化していく時代の

全否定として、こんなやさしい狛犬を

つくったのではないか」

と記している。

そうですよねぇ。

その頃の狛犬は、

招魂社型や威勢のいい狛犬が多かったわけで

あえてこの作者は

時代に逆行しているのです。

 

やさしい顔の奥には

たくましい精神も宿っている

この愛しき狛犬を描いてみようと思った。

 

番外:メルヘン狛犬はどうやって作られたかを考える

狛犬は基本は石を彫って

出来上がるのですが、

今回の小岩田八幡神社の狛犬は

コンクリート製。

 

コンクリートで作る場合は、

削るのはなく、逆に盛り付けると

いうことになる。

 

推測ですが、恐らく

最初に金属の骨格になるようなものを

作り、そこにセメントを載せて

固めていくことになると思う。

 

そうすると、石で作る鬣(たてがみ)の

流れや、髭の毛のような繊細な

表現は難しいと思う。

どうしても厚ぼったく

むっくりとした感じでできると思う。

 

コンクリート製の狛犬は

そういった造りになる宿命があると思う。

 

この小岩田八幡神社の狛犬は

そんな造り方をした中で

絶妙によく出来た作品だと思う。

 

もう少しこの愛らしい

狛犬さんを世間が知ってもらえたらなあ、

そう思う僕でした。

 

僕はかってに、この狛犬を

「メルムーちゃん」と呼んでいる。

メルヘンチックでムーミンみたいだから(^^)

 

「メルムーちゃん」

また会いに行くよ!!

 

メルヘン狛犬を描く

この狛犬を描くのに

最初モデリングペーストを

キャンバスに塗り込めた。

 

おおざっぱな輪郭を描き

全体を塗り込めていった。

 

最初、狛犬の背景も

書き込んでいたが、

なんだかあまり狛犬が

目立たなくなって

なんか違うな、と思ってしまった。

結局、その上からいろいろと

色を足していって

イメージ背景のように

していった。

 

青い(緑)目のメルムーちゃん・色盲者の戦い

ところで、

この狛犬の特徴的なのは

マナコの部分が「青い」ということだ。

実は、ネットを調べていて

この小岩田八幡神社の狛犬のことを

書いている文章を読んでいて

僕は初めて知ったのだ。

えっ。あのマナコ青だったの???と。

ところが、

あとで読んだ圓丈さんの本によると

「緑のガラス玉」と書いている。

 

色覚異常者(=赤緑色盲)にとって

青や緑はとても困る色なのだ。

 

だって信号の青の色が

白っぽく見えるのだから。

(色覚異常者は、位置で覚えて人が多いと思う)

この狛犬は、僕には青ではなく

茶色っぽく見えていたのだ。

 

とにかく、このマナコの目は

正常者は

青という人もいれば

緑という人もいる。

色覚異常者にとっては

ひじょうに混乱する色なのだ。

 

ただ、これも生きていく中で、

生活の知恵として、

青と言う色は

青から緑にかけて

グラデーションっぽく

連なっている色なのだろう、

と解釈しているのだ。

 

ということで、

最初は茶色っぽく

塗っていたのだが、

正常者に合わせて

少しブルーを混ぜて

マナコ部分を塗っている。

 

色覚異常者は

こういう見えないところで

無意識的に正常者に合わせて

作業することもあるのだ。

こういう作業が自分にとっては

とても哀しい作業ではある。

と正直な気持ちを書いたが、

こういうことを語っている

色覚異常者の人はいるのだろうか?

あまり聞いたことはない。

 

色覚異常者はおそらく

絵を描くことで、

トラウマになっている人が

多いはずだ。

たとえば、

「あれっ!、変な色塗ってるよ」

「緑の人間描いてるよ」

「こわい色、塗ってるよ!」

いろいろ嫌なことを言われて

生きてきたはずだ。

だから、絵を描くことを

やめて別の仕事をしている人が

多いだろうし、あえて

色を使う仕事をしている人がいたとしても

その人数はかなり少ないとは思う。

 

いずれにしても色覚異常者は

心のどこかで、

自分は「正常者とは違う位置にいる」んだ、

という「哀しい思い」を意識的にせよ

無意識的にせよ心に秘めていると思う。

だが、それは誰も口にしないだろう。

 

僕はあえて

このことを記していこうと思う。

今はこれが僕の役目だとも思っている。

 

ブルーマナコと言われる

狛犬さん、どう思われるのかなあ。

口を開けたメルムーちゃん。

そしてメルムーちゃんのおこちゃまも

おおきな口を開けて

微笑んでいる……。

 

素敵な出会いをありがとう。

 

照明の異なる写真

今回の絵ひじょうに凸凹しているので

光のあたり具合でかなり色が変わって

みえるようなので

明るめに撮れた写真もここに載せます(^^)

北小岩八幡神社・阿形狛犬2
北小岩八幡神社・阿形狛犬2

※北小岩八幡神社 → 小岩田八幡神社 表記に変えました(2023年6月23日)


題材の場所: