新曽氷川神社(にいぞひかわじんじゃ)へ参拝
2020年の1月の風が冷たい頃
僕は埼玉県戸田市辺りを
レンタサイクルで神社巡りをした。
新曽氷川神社は昼前に着いた。
参道がとても長い神社で
僕が着いたのは参道途中の場所だった。
二の鳥居をくぐるとすぐそこに
柿の木が植えられていた。
1月なので、葉っぱがいくつか残って
いるだけだったのだが、すぐ横に
「戸田市指定の夫婦柿」と書かれた杭が
あったので目が惹きつけられた。
文章を読んでみると、
なんと雌型(丸形)と雄型(細形)という
2種類の柿が実る珍しい柿の木
ということが分かった。
近くで庭を掃除している人がいたので
「珍しい木ですね」と声をかけると
夫婦柿のことを教えてくれた。
なんと、その方は宮司さんだった。
それから、社務所にまで案内していただき
夫婦柿のことを記したパンフを
わざわざ渡してくれたのだった。
「去年の秋には、丸い柿と細長い柿が
けっこうなってましたよ」
と教えていただいた。
実際に実った木を、見たいものである。
ひじょうに優しい宮司さんであった。
参拝をしようと拝殿前にいくと
左右にどっしりした
狛犬が台の上に座っているのがわかった。
近づいてみると、
ひじょうに重厚感ある目つきのするどい
狛犬であった。尻尾は体に張り付いて
まるまってはいるが、
江戸尾流れとは違った形をしている。
両耳には、きっちりとサイズを図って
作ったであろう毛糸の
耳当てが着けられていた。
信心深い方がこの神社に
お参りに来ているのだろう。
台座に「榎本九市郎」と
石工名が刻まれていた。
細部にこだわるより
全体をおおまかに掴んで
彫り込んだ狛犬だ。
このどっしりとした風格と
まなざしに目が惹きつけられた。
新曽狛犬を描く
春頃、キャンバスを取り出して
この印象に残った狛犬を描いてみることにした。
モデリングペーストに
いろいろ色彩の絵の具を混ぜ
今回はアルミホイルを利用して
感覚的に下地をこしらえた。
なんかぐちゃぐちゃした下地に
したかった。
絵の学校や大学に行っていないので
思いついたことを、すぐ試してみたくなるのだ。
色のちらばった下地に
アンバーをつけた筆で全体の
おおまかな輪郭を描く。
そこで絵は止まったままだった。
今年の1月にまた
取り出して
今度は油絵の具を上に
塗りつけた。
ひじょうに重厚感のある
狛犬だが、あまり重くしたく
なかった。やわらかな感じが
欲しくなった。
イエロー、ブルー、
パープル、アンバー、
グリーン、ホワイト、その他…。
色覚異常者は混色すると
何色になっているのか
判断できない。それは
言葉が寄り集まって
絡んだ糸玉のような状態になるので、
なにがなにか分からないのだ。
ただ自分の眼で見た心地よい色と
心地悪い色はある。
だから、心地よいと思った
ところで筆を止める。
混ぜ過ぎたりすると
とても気持ち悪い色になったりする。
止め時が難しいのだ。
今回は、この新曽狛犬の
重厚さのなかの優しさを
引き出そうと思った。
するどい眼差しの中の優しさを
表そうと思った。
アンビバレントな狛犬である。
「F8・キャンバス・メディアミックス」
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