星宮神社の狛犬
2024年の9月初旬の土日、僕は栃木県の那珂川町あたりを
神社回りして、そろそろ帰路につこうと思った。
ただ帰りの途中、ひとめ見たい狛犬がいた。
事前にグーグル・マップで調べて
興味深い狛犬のいる神社にはチェックマークをつけているのだ。
那珂川町から西南方向にある高根沢町方面へ向かった。
田園地帯を進むと木々の生い茂った森が見えてくる。
だいたい田んぼの見える風景の中にぽつんと森があるところは、
何かしら歴史的なものがあるところ。
寺社があったり、古墳があったり、祠があったり。
ここも案の定、そのような田んぼの中に鎮座する神社であった。
森の前には珍しく広場があったので、そこに車を停めた。
明神鳥居の赤い鳥居をくぐると
灯籠が左右にあり、正面には拝殿が見えた。
ただ、狛犬がいない!
「あれ、違ったかな…」
右側に見える境内社(何を祀っているのか不明)の
前に、あの狛犬が鎮座していた。
境内社の左側には、阿形、
右側には、吽形が
どちらも前脚に顎を乗せ
お互い見つめ合っていた。
通常の阿吽と逆配置である。
「これだ、これだ!」
思わず狛犬の回りをぐるぐる回る。
素朴でおおまかな造り。
団子っぱなに丸い瞳。
背中には、ちょんまげのような
尻尾が張り付いている。
後ろ足は線彫りで渦模様。
しかし、なんでこの狛犬は
前脚のうえに顎を乗せているのだろう。
今まで見たことのない格好である。
威嚇するでもなく、休憩をしているようで
まったく気がゆるむ狛犬である。
台座を見ると、石板に筆文字で書かれた
奉納者の名前が張り付いていた。
これは左側、右側の台座には
と書かれている。
なに! この像は奉納者自身が彫ったのか。
それも76歳で造り上げ、
77歳の喜寿(㐂寿:きじゅ)の祝いとして
奉納したものなのだ。
けっこう歳をめして制作した狛犬なんだ。
どういう思いで造ったのろう。
飼っている犬がくつろいでいるところを
デッサンして、自分なりのイメージで
造ったのだろうか…。
他では見たこと無い個性的な狛犬なので
この方が創作した狛犬なのかな…。
名前を検索しても、どこにも出てこない。
ここだけの作品なのだろうか…。
高齢ながら、石に鑿(のみ)をあてて
懸命に彫ったのか…想像を巡らしてしまう。
ネットで検索すると「たれぱんだ」のような
狛犬とも記されている。
たしかにゆるい狛犬さんである。
彫った古口さんは、
きっとやさしいおじいちゃんだったのだろう。
だって、このようなゆるい狛犬を造る人って
けっして厳つい人じゃ無いだろう。
なごませてくれる狛犬さん、古口さん
ありがとうございました。
温かい心になって僕は帰途についたのであった。
題材の場所:
思った。